<実践>発注のための熱間鍛造ガイド

金属部品製造をお考えの製造メーカー担当者様に
熱間鍛造コンサルタントの德田勝也が、
今すぐ役立つ知識やノウハウを解説いたします。

<第2回>コスト削減 事例

鋳造から鍛造への変更で、不良をゼロ化。
併せてバフ研磨工程を簡略化する事により、
約30%のトータルコスト削減に成功

従来、鋳造製品の品質が悪く、不良が多数発生、
選別検査に多大な人的コストがかかっていました

A社様は、手すり・ハンドル・錠前の製造メーカーです。
従来、アルミ製の大型ハンドルを鋳造により部品製造されていましたが、部品の品質が安定せず、強度不足により割れや折損を起こすケースがある事と、製品不良の多さに頭を悩ませておられました。例えば1000個の部品を鋳造した場合、外観検査だけでも約100個程度が基準に達せず、再度高熱で溶かして再製造を行わざるを得ない状況でした。 さらに、選別検査に社内担当者による人手を取られるなど多大なコストがかかっていました。

また、鋳造品全般の課題として、製品表面に「鋳肌(いはだ)」と呼ばれる独特のザラツキが生じます。従来の工程では、このザラツキを「バフ研磨」という人手のかかる別途工程処理(粗研磨・中研磨・仕上げ研磨の3回)を行うことで滑らかに仕上げていたのですが、ここで大きな問題に直面しました。研磨することにより、これも鋳造特有の現象である「す」(気泡)が、部品表面に浮き出すこととなったのです。

厄介な事に、研磨直後の段階では目視確認できないほど細かい気泡であり、最終の塗装工程を行った段階で初めて不良が露見するため、工程ロスが大きくコストアップの要因となっていました。

鍛造工法への転換に変更、部品の強度アップを御提案。
さらに、工程削減による全体コストの削減を図りました

そこで、中野鍛造所では、鍛造品への変更と同時に、部品の強度アップを御提案。
さらに、工程削減を行いトータルコストの削減を図りました。

まず、部品強度をアップできる大きな理由は、鋳造から鍛造に変更することで、金属内部の結晶が整い密になり、製品形状に沿って「鍛流線」と呼ばれる金属組織の流れが生じるためです。

また、鍛造への変更により「す」が皆無となり、製品表面が滑らかに仕上がるため、「バフ研磨」工程を簡略化できることも、併せて御提案させて頂きました。

不良ゼロ化に成功。バフ研磨工程の簡略化等により
約30%のトータルコスト削減を実現出来ました

鋳造から鍛造への変更により、部品強度がアップ、不良発生による工程ロスが事実上ゼロとなりました。さらに、従来3回必要だったバフ研磨工程も、2回まで簡略化することが可能になりました。

結果、トータルで約30%のコスト削減を実現することが出来ました。