お問い合わせ
ダイヤル
072-961-6925

バリと離型剤の巻

今年の夏は、例年にない酷暑となり、熱中症が多発して、鉄道の運行にまで支障をきたすほどですが、皆様はお元気でお過ごしでしょうか?

弊社の神鍋工場は、兵庫県北部の高原地帯にあり、夏場は都会に比べて過ごし易い気候ではありますが、さすがにこの夏は工場内の気温もぐんぐん上昇。社員には、十分な水分やミネラル補給、休憩など、熱中症対策をとってもらっております。

さて今回は、この厳しい暑さをものともせず、「摩擦」と「バリ(張り)」の熱い共存関係についてお話をしたいと思います(笑)。


熱間型鍛造の場合、基本的には被鍛造材が鉄であれ、ステンレスであれ、はたまたアルミニウムや黄銅(真鍮)であっても、鍛造すれば必ず「バリ」が出ます。

と申しますと、「あれ? 中野鍛造所は、バリ無し鍛造品を製造していますよね?」と鋭いご指摘を受けそうですが、私どものバリ無し鍛造は非常に特殊で限定的な方法なので、今回は一旦横に置いてくださいませ(汗)。今回お話しするのは、鍛造の一般論となります。

実は、一見ムダに見えるこのバリは、マジにエエ仕事をしております(笑)。

それはどう言う事かと申しますと、鍛造型の彫り面には、複雑な輪郭や角々しい面の繋ぎ、または大きな曲面と小さな隅Rの組み合わせ等、さまざまな形状があります。


201808161.jpg


その金型の上に真っ赤に焼けた円柱形の材料を置き、プレス機で金型に押し込んで成型するのですが、その際、製品内部に発生した内部の欠陥(巻き込み、被りと言われるもの)を鍛造製品内部から外部に排出する作用を担っているのが、バリなのです。


つまり、内部欠陥が無いのは、バリのお蔭という事になりますね。


2018081612.jpg


そして、バリの二つ目の仕事は、プレス成型時に金型の彫面(実際の鍛造品の形状の彫り込んだ箇所)へ材料を押し込む役割です。

バリは薄いため、金型表面上で早く冷えて固まり、それがブレーキ役となって、圧造中の熱い材料が金型の隅々までへ流し込まれます。このように、バリは鍛造成型の手助けをしているのです。

ですから、鍛造屋の生産技術の腕の見せ所は、いかに最小限の面積のバリで鍛造品を成型させることが出来るかにあります。

もちろん、使用するプレスの最大加圧能力や、それに相応しい製品の大きさや形状、選定する材料のサイズや質量等がすべて整って、初めて「良い鍛造品」の製造が可能になるのですが、基本はやはり金型の設計がとても重要になります。


と、ここまではバリバリとバリの話ばかりしてきましたが(笑)、鍛造時にもう一つ重要な要素が、材料と金型の「摩擦」を低減する「離型剤」です。

金型に離型剤を塗布する狙いは、鍛造成型時の摩擦を低減させ材料を金型へスムーズに流し込む「潤滑性」と、鍛造品を金型から素早く取り出す「離形性」の向上です。さらに、金型表面の温度を下げる「冷却効果」も目的の一つです。

また離型剤には、「油性」と「水溶性」の二種類があり、鍛造特性により使い分けます。詳細は企業秘密で明かせませんが(笑)、一般的に金型表面温度をあまり上げたくない場合は水溶性、鍛造性の向上を狙う場合は油性を使う場合が多いです。

しかし、仕上状況によっては、あえて例外的な選択をする場合もあります。例えば、金型表面の潤滑性が良すぎると、材料が先にバリとなって外に出てしまい「欠肉」という製品不良になりやすく、逆に潤滑性が悪すぎると、離形性が悪くなり金型にくっ付いてしまい生産性が上がりません。

そんな時は、弊社独自のノウハウにより、生産性が安定するような㊙テクニックを使っています(笑)。


このように、「摩擦を制する者は鍛造を制する」と言われるくらい、良い鍛造品を造るためには「バリと摩擦(離型剤)」のコントロールは複雑かつ重要で、一見、餅でもつくかのごとく簡単そうに見える鍛造現場とは裏腹に、まだまだ高度な技術力と長年の経験値がモノ言う世界です。

この点において、55年以上の鍛造実績のある弊社の自動鍛造ラインは、無類の安定した生産性とスピードを自負しており、お客様にはいつでも短納期で、質・量ともに安定した鍛造品の提供が可能となっております。

いつでも私徳田が、さまざまな問題解決のためのご提案をさせていただきます。品質のバラつきや納期等、お困りの事があれば、是非中野鍛造へご相談ください。

黄銅材料の時期割れ(応力腐食割れ)について

鍛造ブログ 担当の徳田です。


毎朝の蝉の鳴き声と真っ青な空が夏本番を感じさせてくれ、大変暑い日々が続いていますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

先ずは、この度の西日本豪雨ではお亡くなりなられた方々のご冥福と、被災された皆様には心よりお見舞いを申し上げたいと思います。

さて、この大雨による川の氾濫は、一夜にして家族や住宅を失ったり、人々の日常生活を奪ったり、ここ最近の大阪北部地震と言い、大自然の振るう猛威には、人間は為す術がないことを痛感させられる災害でした。

これから夏本番をむかえて被災地では厳しい暑さの中での避難生活、また復旧、復興作業が続くかと思いますが、被災者の皆様におかれては体調に留意され、一日でも早く日常生活に戻られる事を祈念しております。


ところで、話が変わりますが、毎年京都では、7月1日から1か月間にわたり祇園祭が始まります。なんといっても見どころは、山鉾巡行(前祭)の7月17日前後で、最大の人出となります。

またこの頃から関西はようやく本格的な夏の始まりになると言われていて、一段と麦酒が美味しくなり、飲む量もとても進むのは言うまでもありません(笑)


201807191.jpg


それでは、本日のテーマは「時期割れ」についてお話したいと思います。
まず、金属には使用環境との相性というのがありまして、例えば磁石でいうならばN極とS極みたいなものなんです。

たとえば磁石であれば、N極とS極であればお互いに引き合い相性が良いのですが、NとN、SとSのように同極同志であれば反発し合いますよね。

但し、金属の場合になりますと、特に冷間加工を施した合金の場合は(黄銅に限らず)特定の環境において、その金属に付いたわずかな表面キズや欠陥が、いつの間にか思わぬ程大きく広がり、全く大きな力が作用していないにも拘わらず割れや破断にいたるときがあります。

これを「時期割れ」や「応力腐食割れ」と言います。

英語では「SEASON CRACKING」(シーズンクラッキング)とも言います。


その語源は昔に、黄銅製の薬きょうを船で輸送中、長期間にわたり船内の塩水やアンモニアの雰囲気に曝されていたため、荷揚げして開梱してみると薬きょうが割れて使い物にならなかったことに由来しています。

基本的に純金属の場合は時期割れが発生しないと言われていますが、私たちが日常的に使用している金属の多くは合金なので、その金属の種類と使用環境は非常に重要になります。

例えば、一般に銅合金と言ってもざっくりと10種類あり、使用部位により使い分けされています。

例えば先日、お客様から「高力黄銅」と言う材料でボルトを造っていますが、製品使用中にそのボルトが折損しお客様からクレームが来ているのだけど原因がわからないとの相談を受けました。

このボルト(冷間加工製)は人命を守る金具に使用されており、設計思想ではその字の通り黄銅の中でも比較的強度の高い材料を選定されて安全マージンを高くして折れにくく計算されていました。

しかし、強度優先であれば他の合金材料でもよいのですが、銅合金には「防爆性の高さ」があり、今回の製品ではその機能が必要でした。

※防爆性...金属同士の摩擦でも火花が出にくい特性のこと


つまりこのボルトの必要な機能は「高強度」+「防爆性」であり、それに相応しい材料という事で当該材料を選定されたようですが、この材料は黄銅の種類でも比較的時期割れし易い材料であった為に、先ずはアンモニアイオンや塩分の多い環境で使用されていなかったか調査して下さいとお伝え致しました。

特に黄銅はフェノール樹脂との組み合わせで、アンモニアが発生し応力腐食割れが発生しやすく、ステンレス鋼では塩素の雰囲気がその割れを進行させ、アルミニウムは水蒸気や海水がその原因になることが多いのです。

ですので、設計の際は十分に留意されることをお勧め致します。

また、基本的に同じ黄銅材でも高力系の強度の高い材料ほど時期割れの進行が早い場合が多くなるのは、その物性として靱性(粘り)が少ないためだと思われます。そこで、金属の選定にあたっては極端に「硬さ」ばかり求めるのではなく「靱性(しなやかさ)」のバランスがとても大切になります。ちなみに先のボルトの材質に関しましては、お客様には熱間鍛造から切削品にとお薦めし、「高強度」+「防爆性」にバッチリ対応。無事ボルトの問題は解決されました。


これからも中野鍛造所では鍛造のみならず、金属加工のソリューション企業としてお客をサポートしてまいりますので、ぜひ鍛造を始め、金属加工部品等にお困り事がれば、何なりと遠慮なく、中野鍛造所までお申し付けください(笑)。

ステンレス鍛造について

鍛造学ブログ 担当の徳田です。


今年の春は例年より早く桜が開花し、気温が高くあっと言う間に葉桜になってしまいましたが、皆様はこの短い春をどのように楽しまれたでしょうか?

小生は休憩時間に弊社の近くの公園でお花見をしたくらいで、「花見で一杯」とはなりませんでした(笑)。

それよりもこれだけ連日の好天が続くと、近々ゴルフコンペがあるので確率的に当日の空模様が気になります、今日この頃です(笑)。


201804111.jpg


さて、今回のブログは、少しでもお役に立つ内容を提供したいと言うことで、真剣な内容にいたしました。ズバリ「身から出た錆が身を守る?」...の巻です(笑)。


まず、この世にはたくさんの種類の加工材料、材質がありますが、鉄をはじめアルミニウム、黄銅、銅、樹脂等々の最終表面仕上げ(トリートメント)を施す方法の一つに「メッキ(鍍金)」があります。

メッキには色んなメリットがありまして、例えば装飾品のネックレスやブレスレットには金メッキや銀メッキ、ロジウムメッキ等を付けることにより、地金の色を隠して美しく見せたり、また耐食性を向上させたり、キズを付きにくくしたり等と、様々な効能があります。

しかし、ご存じのように「メッキは剥げる」という慣用句的言葉があるように、メッキ品の経時劣化の進行は食い止めることが難しいのですよ(苦笑)。


では、メッキしないでも錆びない金属は?と聞かれると、殆どの方は「ステンレス」とお答えになられますが... そうです。一応正解です!

でも厳密にいうと△なんですよね...。

と言いますのも、一般的にステンレス・スチールの主成分は鉄で出来ており、そこにクローム(Cr)という元素を12%以上添加し、錆びにくく改良したものなんですね。

また、ちなみに英語のStainは「汚れや錆」の意でLessは「無い」の意。二つの語彙を合成して錆びない鋼という意味があり、英語表記ではStainless Steelとなります。

実際には、ステンレスに含まれているCr成分と酸素が結合して、不動態被膜という肉眼では見えない薄い酸化被膜をつくっているので錆が進行しない訳なんです。

この被膜はとても薄いですが大変強いので、カネ束子などでゴシゴシ傷つけても周りにある酸素とCrが直ぐに結合し自己再生して被膜を作ってしまうのですね。

つまり、ステンレスは「錆びない」のでは無く、厳密にいうと「身から出た錆(酸化膜)が自分の身を守っている」という事です。ホント凄いですね~(笑)。

 
そんな錆びにくい特性を持つステンレスは、表面処理しなくとも素地のままで使えてしまうので、最近はジワリジワリと水栓金具業界に浸食中なんですよね(汗)。

例えば、黄銅製水栓金具部品の場合、加工後に研磨とクロームメッキを施してあの台所にあるピッカピカのワンハンドルのカラン(水道蛇口)等に変身するのですが、ステンレス材に変更すればメッキ工程が無くなるのでは?とお考えになられるお客様がおられますが、確かに黄銅からステンレスへ材質変更すれば材料費は安くなりメッキ費も発生しないので良いこと尽くめと思うケースが見受けられるのですが、そうは問屋が卸さない理由がありまして...。←古い(汗)

その答えは、時代や技術が進みチタンやインコネルといった難削材が加工できる時代になりましたが、実はステンレス(SUS304、SUS316)材も、やはり難削材の一つで、黄銅材やアルミニウム材に比べて加工コストは、かなり高くなるのですよ(笑)。

例えば黄銅材であれば、ドライ(切削油無し)切削加工が出来ますが、ステンレス材の場合は加工熱で発火する恐れがあるので、回転速度と送り速度を下げて切削油を掛けながら切削する必要がありますし、なにせ大変硬い材料なので刃具の消耗も早いので、その結果工具費も嵩むのですよね。

 
ですから、単純にステンレスの材料費のコストが黄銅より25%安いからと言っても、加工費を含めたトータル価格では逆に高くなるのが一般的なんですよ。

製法や材質によって加工費が変動することを、私たちがお客様に今まで詳細なご説明をあまり伝えてこなかった事は否めませんが、コストを中心に考えた場合、「身ら出た錆」の本来の意味とは真逆の意味を含んでいるのがステンレス鋼の特徴と言えるのは何となく面白いですよね~(笑)

鍛造や切削についてのお困りごとや疑問などございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせ下されば問題解決の一助としてバッチリとサポートさせて頂きますので、引き続き中野鍛造を宜しくお願いいたします。

アニール処理について

鍛造学ブログ 担当の徳田です。

皆様、大変ご無沙汰しております。


さて、今年の冬は例年に増して、日本の上空で冬将軍が居座り列島各地に大雪の被害をもたらしているようですが、皆様の地域で雪の影響は如何でしょうか?

なにせ、今年の大雪は地球温暖化による異常気象なのか、はたまた、人間の利便性ばかりを追求した現代の都市構造や社会システムが雪害に弱いのか、とても議論の分かれるところではありますが、「備えがあれば憂いなし」...って言葉は、今回本当に身に染みて大切だと思いましたね(汗)。

では、早速本題に入りたいと思いますが、今回は、熱間鍛造処理のクオリティをより高める、「アニール処理」についてお話したいと思います。


例えば、人間は体の芯からカチカチに凍るくらい冷たい氷点下の屋外から、暖房の効いた暖かい屋内に移動したりお風呂に入ったりすると、全身の血液の巡りがよくなり肩や首、関節の筋肉がほぐれてリラックスできますよね。

実は、金属の成型品や樹脂成型品、切削加工部品も人と同じように素材に合った一定の条件で温めると、素材の内部応力が抜けていきストレスフリーに(柔らかく)なるんです。

これを、焼鈍(焼きなまし)処理といいます。又は、「なまくら」ともいいます。

よく世間で言う、「温室育ちで環境の変化について行けない人」のことを「あいつなまくら(鈍ら)やなあ」と言う同じ意味です(笑)。

少し話しが逸れましたが(苦笑)、熱間鍛造加工では焼鈍する事により、後加工での歪の影響を最小限にとどめることができ、より高品位な製品に仕上げることが可能になります。そして、金属は焼き入れや焼鈍する事により、その金属の特性を自ら変化させて、強くなったり柔らかくなったり、靱性やしなやかさを持ち合わせさせたりすることもできます。

また、鉄の熱間鍛造加工を施すことにより、結晶粒が肥大化したものを標準組織に戻す場合は「完全焼きなまし」といいますが、残留応力除去が目的の場合は、それと区別してアニール処理または「ひずみ取り焼きなまし」と呼んでいます。

その残留応力には、「引張残留応力」と「圧縮残留応力」と二つの成分があって、材料の内部から外部(外側)に向かう力が「引張残留応力」で、その逆で材料の内部(内側)へ向かう力が「圧縮残留応力」といいます。



201802201.jpg

<引っ張り残留応力の模式図>


特に、黄銅材やアルミニウム材を熱間鍛造した場合には、素材が外側から冷えていくので、内側が先に冷えた外側に引っ張られ、その状態では常に引っ張り残留応力が残るのです。

そういった残留応力の残った材料などで切削加工を行うと、そのバランスが崩れて歪や反りといった問題が発生しやすいので、加工前にアニール処理を行うことにより、常に安定した精度で部品が製作できるようになります。

ちなみにアニール処理は、実は金属だけではなく、反りや割れの防止に身の回りのプラスチック製品にも施されています。


この優れたアニール処理に関心があられる方は、まずはお気軽に、私、徳田までご相談下さい。検討される鍛造加工品に合わせて、最もベストな対応を検討させて頂きます。

アプセット鍛造(熱間)

鍛造学ブログ 担当の徳田です。


201801131.jpg


謹賀新年。

明けましておめでとうございます。旧年中は格別のお引き立てを賜り厚く御礼を申し上げます。
本年も、なお一層のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

新年の堅苦しい挨拶はさておき本年の干支「戌」年ですが、皆様にとって素晴らしい一年であります
ように祈念いたます。

さて、大変久しぶりのブログになってしまいましたが、ご覧頂いている方には本当に申し訳ございません。これからも、「鍛造ブログ」頑張ってまいりますので、何卒宜しくお願い申し上げます!


さて、ここ数年の小生の元旦の行事といえば、初詣もそこそこにして家族のアッシー君として、関空近くにある、アウトレットモールの初売りバーゲン会場へ駆け込むのが定番となっております(笑)。

いつも、開店時間より早めに到着していますが、案の定人気店での福袋などは、開店前にもかかわらず何十人以上もの長蛇の列ができ、どこが最後尾かわからない程の混雑ぶりでした(汗)。

さすがに数万円の福袋は買いません(買えません...涙)が、市価の30~50%OFFの衣料品や雑貨、アクセサリー、シューズなど、とても魅力的な商品がたくさん販売されていました。

小生は基本アッシー君なので、買い物する気など全くなかったのですが、周りにつられて仕事用の革靴を一足、衝動買い?してしまいました(汗)

ですので、毎年お正月明けは、お年玉にお買い物と高額な出費が続き、「金欠病」でアップアップしております(涙)。


私話はさておき、そろそろ真剣に本年初年の「鍛造ブログ」を、スタートさせたいと思います。

さて、本日はアップアップつながりで?(笑)、「アプセット鍛造」方法について少々お話しをしたいと思います。

アプセット鍛造とは、別名「すえ込み鍛造」や「ツバ出し鍛造」とも言われて、おもに丸棒の先端部及び中間部に材料径より大きいツバを張り出させる方法です。

外観的には細長い軸形状でありかつ、その一部分が帽子のツバのように張り出している形状、例えば下図のような形状ですね、


201801132.jpg


一般的に、このような形状を旋盤加工で太い丸棒から削り出すのは時間がかかり、加工コストも高く
なりがちなので、ならばこの鍛造方法で一気に成型しちゃえば、材料費も仕上げ加工時間も助かりトータルコストの低減につながりますよね。


201801133.jpg
鍛造完成品


また、アプセット鍛造品を成型する機械のことを「アプセッタ」と言い、材料の軸部をグリップする機構と軸方向にプレス成型する機構を併せ持った構造になっており、一般的な上下方向で加圧するプレスとは全くの別物になっています。

加えて、アプセット鍛造は写真のように、パンチで軸方向に加圧するため材料の先端部が潰れ、材料の繊維方向の流れ(鍛流線)を複雑化させることになり、丸棒から旋盤加工で仕上げるのと比べて強靭な製品になります。


201801134.jpg
鍛流線


用途としては、トラックや産業用機械の駆動軸や回転力伝達部品、バルブの弁棒など、主に利用されています。

また、一般的にアプセット鍛造は型鍛造と比べて成型形状は制限されますが、金型費は相対的に安くなる場合が多いのも特徴です。

弊社では、型鍛造専門でアプセット鍛造と設備が全く違うので、このような製品は製造できませんが、企業ネットワークによる対応や、ご相談にはお答え可能です(笑)。


その他、熱間鍛造についての疑問やご質等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
私、徳田が「熱間鍛造のプロフェッショナル」として、懇切丁寧にお応えさせて頂きます。

それでは、改めて本年も宜しくご厚情を賜りますようお願い申し上げます。


※挿入写真/株式会社ミヤジマ様 御提供(使用許諾済)

インパクト成型

鍛造学ブログ 担当の徳田です。


9月は、通年台風シーズンの真っ只中になりますが(苦笑)、先日日本列島各地で大変な風水害の爪痕を残した台風18号も過ぎ去り、朝夕はめっきり気温も下がり、大変過ごしやすくなってきましたネ。ようやく秋の気配を感じられる季節になってきました(笑)。

今夏は各地で天候不順で、真夏にもかかわらず雨天が続いたり、酷暑であったりと気候変動が激しかったのですが、これも地球温暖化の影響かもしれませんね...。


我が家でも今年の夏の夜は余りにも寝苦しい日々が続いていたので、毎晩エアコンをつけっ放しで
就寝していたのですが、なんと電気代の請求金額を見たとたん目の玉が飛び出ました...(汗)。

やっぱり仕事と同様に、無駄なコストはセーブせねばとセコく考える今日この頃です(苦笑)。

皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか?


さて、このところのお客様のご相談内容を整理してみますと、冷間鍛造方法で製作した方がメリットの
あるような形状の部品が多くなってきております。

基本的に冷間鍛造は熱間鍛造と比較して、プレスで成型したときの材料展伸性が良くないので、
金型を複数個以上使って、材料を少しずつ回数を分けてプレス成型していきます。


但し、どんな世界にも例外があるように、冷間鍛造の種類の中にはインパクト成型といって、材料スラグを金型の中に装填し、ワンパンチ(1回プレス)で長いパイプ形状に成型できる方法があります。

例えば、大きめのボタン形状のアルミ材(スラグ)を金型に入れて、パンチ(ボス)で垂直に加圧するとアルミの材料が、こんな感じでスルスルとパンチの外周に沿うようにせりあがって成型されます。


201709261.png

<インパクト成型のイメージ図>


イメージ図では4工程に分かれているように見えますが、この一連の流れは実際には1工程(1パン
チ)で成型されます。だから量産性は非常に高く効率のいい製造方法の一つでもあるんですね。

しかし、逆にいうと小ロットでは製造コストを下げにくいと言える訳でもあるんです(汗)。


一例をあげますと、材料がアルミニウム場合、身の回り品でいえば、油性サインペンや口紅用ケース、ヘアスプレー缶等の筐体がこういった「インパクト成型」法で作られていることが多いようです。

このインパクト成型はアルミニウム材のとの相性が非常良く、特に肉厚を薄く、直径に対して全長が
に長いパイプ形状に最適ですなんですね。


弊社でも一時、このようなインパクト成型でVTR用アルミヘッドの製品を量産しており、冷間鍛造にも対応させて頂いております。
このように中野鍛造では、部品の形状に応じて、熱間鍛造/冷間鍛造それぞれのコストメリットを検討した上で、柔軟に対応させて頂いております。

もし、熱間鍛造で部品製造を行なうのか、冷間鍛造で行なうのか迷われている場合は、ぜひ中野鍛造まで、お気軽にご相談ください!最適なアドバイスをさせて頂きます(笑)。


「モノづくり魂は常に熱く、仕事はクールに」をモットーに、社会に役立てるように頑張っておりますの、これからも中野鍛造をご愛顧のほど宜しくお願い致します

熱間鍛造と冷間鍛造

鍛造学ブログ 担当の徳田です。

まだまだ朝晩の冷え込みが厳しい中、ようやく日中の日差しは春を感じさせてくれるようになり、間違いなく、春に向けて季節が一歩一歩進んでいくのがわかるようになってきましたネ。

また、この時期は卒業式が真っ盛りの季節でもありますが、私も娘の卒業式で家内と一緒に出席してまいりました。

皆様におかれてはいかがお過ごしでしょうか?

あとひと月もすれば、ポカポカ暖かい桜の季節ですね~。ホント待ち遠しいです(笑)。



さて、今回は熱間鍛造と冷間鍛造の違いとその特性についてのお話...

最近のお客様からのお問い合わせのなかで、「熱間鍛造で冷間鍛造レベルの公差で製造できませんか?」とのご相談が多くなってきております。

また「熱間鍛造品の一部分を切削レスで使いたい」と要望されるお客様も増殖中?(笑)

そんなわけで大雑把ではありますが、以下に説明させて頂きます。

まず熱間鍛造とは、書いて字のごとく金属の素材(一般的に丸棒)を所定の長さに切断後、加熱して鍛造しますので、成型後常温になれば製品は必ず収縮します。

ですから、金型はその収縮率(延尺)を考慮して少し大きめの寸法で製作しますが、厳密に言えば夏場や冬場の外気温度差で製品寸法は多少のバラつきが発生します。

また大きさにも依存しますが、鍛造時(非鉄金属材の場合は基本的に一回成型)には、150t~500tの大きなプレス圧力が加わり、焼き入れした金型といえどもその瞬間には「弾性変形」しており、製品の歪や反りの発生につながります。

なので、高精度な鍛造部品が必要な場合は、あと工程で切削加工を追加して仕上げる方法を採用する場合が一般的です。

201703061.jpg
加熱された金属素材(左)と熱間鍛造直後の鍛造製品(右)。鍛造直後も高温のため、常温になれば製品は収縮します。


一方で、熱間鍛造とは違う冷間鍛造方法は、材料を常温のまま成型しますので「金型寸法」と「製品寸法」はほぼ同じになり、仕上り精度や公差レンジといった点では熱間鍛造より優れ、場合によっては切削加工無しといった設計も可能です。

但し、一般的な冷間鍛造の場合は、材料を加熱していない為に素材の変形抵抗が大きく、また1プレス当たりの素材変形量も少なく、複雑な形状の製品を成型する場合は、一度に金型が複数個以上必要になり、ロット数量が少ないと採算性が悪くなる傾向にあります。

その点、熱間鍛造の場合はロット数が数千個以上であれば経済ロット数になり、製品の対応できる形状としても熱間鍛造は金型設計自由度が高く、金型が上下分割できれば基本的に成型が可能です。

主に熱間鍛造方法というのは、「一次素材から二次素材へ変える製造技術」という事であり、熱間鍛造品単体では部品ではなく基本的に「二次素材」だと概念をお持ち頂くと大変ありがたく思います。

とは言え、形状にも依存しますが、熱間鍛造品で弊社独自の<バリ無し鍛造技術>を使えば、冷間鍛造では難しい形状と冷間鍛造品並みの精度を出すことが可能です(笑)。

cdn-blk02-img2.jpg
バリ無し鍛造技術による当社熱間鍛造品


但し、マテリアルは黄銅材に限りますが・・・(汗)

その為には、お客様の図面を基に弊社との二人三脚による互恵関係を構築し、鍛造性向上と高品質化できるような提案をご快諾頂くことで、末永くコストパフォーマンスの良い製品を供給させて頂けると思います。

ぜひ、熱間鍛造で冷間鍛造並みの製品精度を出すことができればとお考えの方は、<非鉄熱間鍛造品のエキスパート 中野鍛造>へ是非、お問い合わせご相談をお待ちしております(笑)!


高精度な熱間鍛造品については、こちらのページでも解説しています。

販売価格の値決めについて

鍛造学ブログ 担当の徳田です。

最近、やっと寒くなってきたと思えば、ポカポカ陽気になったり、でも夜は寒かったりして、何か変な気候が続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか(笑)。

さて本日は、販売価格はどのように値決めされているかについてお話したいと思います。


まず政治のお話になりますが、世界が大注目していたアメリカの大統領選挙は超以外?ドナルド・トランプ氏の勝利に終わりました。

201611181.jpg

皆さんはどちらが勝利すると予想されていたでしょうか?

わたくし個人的には、近年の往き過ぎたアメリカ流「グローバルイズム」が、アメリカ人の一部である知識階級の人々だけを潤し、アメリカ全体の「経済格差」を増長させた結果、中間層以下の国民を不満にさせ、その結果が「Make great America again」のスローガンにみられるように、彼ら中間層以下の国民の回顧主義が強まり、アメリカの復活を期待してトランプ氏を当選させたのではないかと分析しております。

そんなアメリカの状況で、国際非鉄金属マーケットでの銅の相場はトランプショックと言われるくらいに暴騰し、銅相場のみならず株式市場や為替市場も乱高下で冷や汗もの...(汗笑)


例えば、銅の価格は非鉄金属のLME国際相場と外国為替市場のドル対円の相場価格で決まります。

LMEマーケット市況の銅価が上昇していても円高に為替が振れれば相殺する場合もありますが、今回のトランプショックではLME価格が上昇し、為替が円安に振れてダブルパンチとなっています。


201611182.jpg


特に足元(直近)の急激な材料相場変動は、製品販売価格への反映が非常に難しい訳でして...(苦笑)。

一例で言いますと、毎月の一定のアイテムで定量的にご注文頂いているお客様については、二か月前の相場価格をスライドして当月の材料価格に適応できるので問題はありませんが、スポットのお客様に関しては足元相場価格が急変した場合、特に相場が急な下落をしたときは納期の関係上足元価格では見積りできません。

つまり足元価格下がったからと言ってすぐに売価には反映できないんですよね・・・。

なぜなら材料メーカーとは二ヶ月前の価格で発注しており、その約一か月後に材料が弊社に入荷しますから(納期遅延する場合もありますので)、材料入荷納期の余裕を含んで当月使用している材料価格はあくまでも二ヶ月前の価格がベースになるのです。

但し、納期二ヶ月を頂けるなら材料足元価格で製品価格提示をさせていただくことも可能にはなるのですが、もちろんそのような余裕のある納期でご発注頂けるお客様は皆無です(汗)。

何れにせよ、初めてお取引き頂く際もしくはご注文を頂く際は、二ヶ月前の材料価格がベースになることをご理解頂ければ大変有難く思います。

アメリカ大統領はやっぱりヒラリー氏の方が良かったのでしょうか?その答えは4年後には出ている事でしょう(笑)。


販売価格については、余裕のある納期(二ヶ月程度)でご発注頂けるのであれば、材料足元価格で製品価格検討することが検討できますので、円安に振れているこの時期はぜひ、前倒しでご発注をご検討してくださいませ(笑)。

鍛造の種類

鍛造学ブログ 担当の徳田です。

いつも鍛造学ブログをご覧頂きまして、誠にありがとうございます。

さて、最近やっと日中を含め暑さが和らいで、涼しくなってきましたね(笑)。

つい数日前まで、当社でもまだまだエアコンが活躍する日々が続いておりましたが、
そろそろ電気代を節電することができるかも・・・、と密かに考えている今日この頃です(笑)。

さて、前回は「鍛造の歴史」についてお話しましたが、
今回は「鍛造」について、もう少し深く掘り下げてお話をしたいと思います。


たとえば、「鉄は熱いうちに打て」という諺が、教育論としてよく使われますが、
それと同じように「鍛造」とは漢字の通り「鍛えて造る」ということです。

つまり、鉄や金属を高温に加熱しハンマーや金型で叩いて鍛えると同時に、
任意の形に整える加工方法を「鍛造」するといいます。

この様に、加熱した金属をプレス機など、外力により叩き、
材料の中に生じたガスや気泡を圧着させ、結晶粒を微細化し、
機械的性質を向上させることが「熱間鍛造」の主な目的なのです。

その特徴としては

①切削工程の削減
②材料の節約
③組織が緻密になり内部欠陥がなくなる
④切削加工では難しい形状が量産可能
⑤強さ、硬さなどの機械的性質が安定する
⑥鋳造品に比較して寸法の安定性が向上する。
⑦製品形状に合った鍛流線(メタルフロー)が得られる

等があります。

次に鍛造の分類として、「冷間鍛造」と「熱間鍛造」があり、
鍛造後加工硬化が残るものを「冷間鍛造」と呼び、
再結晶が生じて加工硬化が残らない鍛造は「熱間鍛造」と呼ばれ、
主に「型鍛造」「回転鍛造」「ローリング鍛造」「自由鍛造」等があります。

また、「型鍛造」の場合、その鍛造方式の違いから、下記のように四種類に分類されます。


forging_type.png


以上のように、鍛造の種類には材料を常温で成型する「冷間鍛造」と
材料を加熱して成型する「熱間鍛造」の二種類があり、

また、熱間鍛造方法の一つとして「型鍛造」があり、
その製造設備の違いから、さらに4種類に区分されております。

ちなみに弊社では、熱間「型」鍛造が主な業務で、
オープンダイ方式、クローズダイ方式及びホリゾンタル方式の設備を保有し、
様々なご要望に対応しています。

また次回も鍛造について、様々な知識を本ブログでご紹介したいと思います。

鍛造の概要(歴史編)

初秋の候、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

まだまだ暑い日が続いておりますが、エアコン依存症になった身体には軽い夏バテ感を感じる今日この頃です。

さて、今回より既存のお客様や新しいユーザー様に鍛造技術についてより一層のご理解をいただくためにブログを立ち上げました。

鍛造の歴史からはじまり鍛造の種類、そして最新の鍛造技術まで少しずつですが小生の与太話としてお伝えしようと思っています。

まず第一回は鍛造の歴史編の概要として語りたいと思います。

時は遡ること、約5000年から6000年前のエジプト文明やメソポタミア文明の頃の遺跡から世界最古の銅製の斧や鋳型が出土していることから、当時の人々が自然界の金や銀、銅などの金属を溶解し加工したのが鍛造の原点といわれております。それは人類が文字を知る以前のことです。

そして約2500年前に中国に鉄製の農具が普及し、日本では弥生時代に大陸からようやくその技術が伝来し、弥生時代後期には青銅の鋳造品や鉄の鍛造品がつくられるようになりました。

第一回用ブログ写真使用.jpg
弥生時代の銅矛(九州出土、1-2世紀)Photo by PHGCOM(2007) / CC BY 3.0

また、古事記や日本書紀によると4世紀に当時親交のあった百済から「卓素」という鍛造技術者・鍛冶師が渡来し「韓鍛冶の法」を伝えたと記されています。

平安時代からの度々の戦乱に必要だった刀剣や鋏、包丁、鍬、鎌、斧などの刃物も鍛冶技術の発達をうながし、鉄砲が伝来した16世紀には短期間でその製造技術を獲得したのもそれまでの鍛造技術が発達していたことを如実に示しています。

それまでは「金敷」と「手槌」で鍛造加工していましたが、詳しい資料はありませんが明治維新のころに、ようやく機械による鍛造加工が始まったといわれております。

以降、大正・昭和・平成と先人たちの努力により時代は進歩し、鍛造技術は私たち日本人の「モノづくり」のベースとして、今日の産業を支える重要な加工方法の一つとなっております。

さて次回は「鍛造とは?」についてお話したいと思います。